2016-11-01から1日間の記事一覧

第11話「土の星テール」

学問が発展している星といえば、土の星テールだといってまず間違いはない。 文学、医学、史学…あらゆる面から深い知識を持つ優れた人物の称号が「博士」だ。博士には全部で五段階のランクがある。第五級博士は山のようにいるのだが、ランクが上がるにつれて…

第10話「幼馴染み」

*** 朝日が眩しく木々の間から差し込むさわやかな春の朝。川沿いにある大きな木の下で5歳のフォートが赤い髪を目立たせ、日差しにキラキラと汗を光らせていた。 「…ふぅー……」 休憩がてら木陰に座り込み傍に置いたタオルで汗を拭いていると、透き通る川の水…

第9話 「炎の星フレイム」

血の気の多い男が集まると喧嘩が絶えないのは世の常だ。きっかけはどれも些細なことで、決着がつく前に原因を忘れていたりすることもある。今回の騒動も誰が最初に起こしたことなのかもう分からなくなっていて、大勢で殴り合っていた。その中でもひときわ目…

第8話 「公爵の考え」

アルメリアとアージェントの姿を見送るとベルは言われたとおりに部屋に入った。部屋に入るもどこか落ち着かず室内を目視程度に見ていると、小さなノックの音と共にアルメリアの言っていたお茶が運ばれてきた。召使の女性は二人分のお茶を用意しながら、どう…

第7話「神殿の姫君」

ソレイユに不時着した小型機から飛び降りてベルはこの国で一番大きな建物を目指して走った。雪よりも白く今にも雲に届きそうなほど大きな建物は神のいる神殿だといわれている。そこにアージェントもいるだろうと確信していた。なぜなら、彼は大神直属の軍の…

第6話「作戦開始」

丁度同じ時、ソレイユでは一人の兵士が慌しく公爵の居る執務室の扉を勢いよく開けた。 「ア、アージェント様!!」「…どうした、その様に慌てて」「はい、只今幹部よりフルール同盟国オーキャルが接近中の謎の彗星によって侵食されたとの報告が…」 その知ら…

第5話「最悪な事態」

オーキャルは銀河で最も清らかな湧き水やエメラルドのように輝く小川が流れることから別名を水の都と呼ばれている。小さな星であるために、オーキャル国軍はとても規模が小さく、自衛機能として足りていない。そのため同盟国のフルールに一部財政利益を渡す…

第4話「速報」

モナミの小隊長任命式目前としたある日、統一国ソレイユでは、近頃発見されたこの第五銀河惑星に接近中の謎の彗星についての会議が行われていた。 「…以上です」「では随時彗星の観測を怠らぬように」「はい…隊長、余談ではありますがフルールの同盟国のオー…

第3話「予感の時」

やがてふたりは訓練生としての鍛錬を終え、一国王軍騎士となっていた。 席について食事を始めたばかりのベルに、モナミが大きな音を立てて扉を開け、息を切らせながらやってきた。「モナミ、一体何の騒ぎ?」「私、国王軍の小隊長に抜擢されたの!」「ほんと…

第2話「外れた道」

フルール一の大きさを誇る大神殿。穢れのない真っ白い色に包まれたその清楚な概観は、第五銀河惑星統一国ソレイユをイメージして作られたという。その真っ白な神殿の中心を表す巨大な扉は今回の公爵訪問のような大きな催し物でもなければ滅多に開かれること…

第1話「騎士団訓練生」

ベルは今年で16歳になる。騎士団の訓練生として小部隊に所属する女子は少なくなく、ベルもその中の一人だ。幼馴染であり親友のモナミとふたりで日々競い合っては腕を磨いていた。訓練生のなかでベルとモナミは抜群に優秀で、そこらの男と剣で勝負して負け…