第10話「幼馴染み」

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朝日が眩しく木々の間から差し込むさわやかな春の朝。
川沿いにある大きな木の下で5歳のフォートが赤い髪を目立たせ、日差しにキラキラと汗を光らせていた。

「…ふぅー……」

休憩がてら木陰に座り込み傍に置いたタオルで汗を拭いていると、透き通る川の水底にキラと光るものを見つけた。
気になってズボンの裾を捲り水へ入ると光るものを手にした。

「…ペンダント?」

拾い上げたものを太陽の方にあげながら眺めていると、先程座っていた木陰の方からザクと足踏みの音が聞こえてきた。

「…あの…それ…」
「…あ?」

フォートはかけられた声と足音に気づき首を傾けると、透き通るような青い目と金色のやわらかそうな髪が肩の辺りまである同い年くらいの子供が大きな木の幹に体を寄せ隠れるように木の後ろに立ち顔だけを覗かせていた。

「なんだ、コレお前のか?」
「う、うん…とても大切なものなんだけど、昨日初めてここへ来てあの橋を渡った時に転んじゃって…きっとその時だって…」

その子は恥ずかしそうにそういいながら水辺まで歩み寄ると、日差しに透けた金髪と青い目はこの世のものとは思えないほど美しく輝いた。
その姿にフォートは思わず見惚れてしまい、少し黙り込んでしまった。

「どうしたの?」
「…いや、ああ…これお前んだったな、ほらよ」
「あ、ありがとう!」
「そーいやぁソレなんなんだよ?」
「あ…これ?これは指輪のペンダントなんだけど、弟とおそろいなんだぁ!」
「弟がいんのか…てゆかまだ名前聞いてなかったな、俺の名前はフォート!」
「あ、僕はアージェント、アージェント・ブランっていうんだ」
「へぇアージェントかぁ…僕……って…お前もしかして男?!」
「え?そうだけど…僕、やっぱり女の子にみえた?」
「え、いや……ちょっとだけな」
「うーん…いつもこうなんだ、どうしたら男にみられるのかなぁ…?」
「んー…お前強いのか?やっぱ男は強くねぇと!」
「え…一応お城で剣技とか武道とかは毎日訓練してるけど…」
「お!じゃあ試しにやってみねぇか?」

フォートはアージェントの返事を聞く間もなく構えを始めアージェントに向った。
アージェントも一瞬だったにも関わらずとっさに交わし構えを向けた。

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「っはぁ…はぁ…」
「ふー…こんな互角に遣り合えたの…久々だぜ…」
「…フォート…君…強いね…」
「いや…アージェント…お前は立派な男だ…俺も負けてらんねぇな…」
「はは…僕も君に負けないように頑張るよ…」

ほんの数十分の間に二人は互角の戦いを見せた。
川辺の木陰に二人ともドサッっと横になり、互いの服や顔が汚れや傷にまみれているのにとても満足そうに笑っていた。
それから二人は自分の身の上の話をそれぞれ話し合った。
話は弾み、気づけば夕刻が近づく頃、アージェントはソレイユへ帰らなければならないと言って立ち上がった。
フォートも立ち上がり二人はギュッと握手をかわした。

「強くなろうな、俺達」

橋の上から夕日を背に思い切りこちらに手を振るアージェントを見ながらフォートは手を振りクスと鼻を鳴らして笑った。

「はは、アイツきっと笑ってんだろーな、逆光でなんもみえねぇけど」

***

それから十数年後、二人は互いに住む星で一番強い男と呼ばれる場所、国軍第一隊長を就任していた。