第14話「風の星ヴェント」

 活気のある港から爽やかな風が街中へ流れ込む星、ヴェント。第五銀河惑星の5つ目の星である。

港を中心とした賑やかで明るい人々の行き交う街は表向きの姿であり、金の亡者と化したこの星を統べるヴェント王、第一子息のスロウス王子の命ずる様々な税や天上金の徴収にヴェントの人々は日々苦しめられていた。

 

 港から少し歩いた雑貨屋の路地を入ると、街の漁師や旅の者が集うバーがある。このバーの奥の部屋にはとあるチームのアジトが存在していた。

チームの名はアスター。王の悪行を止める事を目的として結成された【義勇軍】だ。

少人数だが切れ者が多く在籍しており、中でもリーダーのシオンは風のように素早く、愛用のレイピアを華麗に操り敵を一掃する腕の持ち主だ。また容姿も端麗で、柔らかくウェーブのかかった赤茶色の髪は首元で揺れ、少しタレた目元の泣きぼくろも特徴的だ。その中性的な顔立ちと、優しい性格でチームメンバー、ならびに街の人々より絶大な信頼・人気を得ていた。

 

とある夜、シオンはアスターのメンバーを集めた。

「みんな聞いてくれ。しばらくの間、ヴェントを離れる事になった。俺が不在な分、アスターの活動は縮小するだろうが出来る限りヴェントのみんなを守って欲しい」

突然の報告にメンバーは動揺し、ざわついた。

 「ソレイユ国のアージェント騎士団長より召集令状が届いたんだ。どうやらヴェントにも関わる大変な事が起きていて、俺もその対応に向かうことにした。…アスターのみんなには迷惑をかけるが、どうか理解してほしい」

しかし次の言葉を聞き全員が納得し、協力すると口々に賛同の意を示した。

 「なーに水臭い事言ってんすか、リーダー!留守は俺たちに任せてくださいよ」

アスターのメンバーはシオンの境遇も知っているため、彼の応援をしない者はいなかった。

 

 シオンのフルネームはシオン・ヴェント。悪王とし敵対しているヴェント王の第二子息、つまりシオンも王子である。血の繋がった父と兄を敵とし、人々を守る道を選んだシオンを勿論王が許す筈はなかった。

「反逆者とみなし、シオンをヴェント家より除籍とする」

ヴェント王はみせしめに、年に一度行われるヴェントの人々が集う祭りの場で、シオンへ王家からの除籍を命じた。

しかしシオンは風のように爽やかに微笑み、そして高らかに叫んだ。

「除籍?ふふ、喜んで♪……父さん…いえ、ヴェント王、そしてスロウス王子!必ずあなた方の悪行を止めてみせます。俺がヴェントのみんなを救います!」

 

この事はアスターのメンバーはもちろん、ヴェントの誰もが目撃し、知る事となった。