第16話「集合」
朝露が木々の葉を濡らす涼やかな朝、招集令状によってソレイユへ集った者達は指定された会議室へ足を運んだ。
集まったメンバーはアージェント、ベル、フォート、サヴァンの4名だった。
アージェントは他の2人と顔見知りのようでそれぞれに挨拶をしていた。その様子をベルはアージェントの後ろから見ていたが、招集された2人は一般人とは圧倒的に異なるオーラを放ち、その存在感にひと目でこれから共に戦う選ばれた仲間だと理解できた。
自分も自己紹介をしなくてはと会話の折をみてベルは威勢良く挨拶を始めた。
「あ、あの!お初にお目にかかります、私はフルール国王軍騎士のベルジュメルと申します」
「ん?ベルジュメル?なげぇ名前だな…ベルでいいな。よろしくな、ベル。俺はフォート、出身はフレイムだ。一応コイツ、アージェントとは幼馴染ってヤツだが、俺がここに来た理由は勿論それだけじゃないぜ?」
フォートは目を輝かせ饒舌に自身の活躍ぶりを語り始めた。
アージェントは些か呆れたような表情をするもその顔はまるで「まあ、聞いてやってくれ」と言わんばかりの友人を思いやる優しい目をしていた。
しばし話を聞いていると、フォートの隣に座るモノクルをつけた青年が持っていた分厚い本をパタンと音を出して閉じたかと思うと代わりに閉ざしていた口を開いた。
「フォート、と言いましたか?…君の武勇伝はもう結構。そろそろ私にも挨拶させてください。時間が惜しいです」
青年の淡々と述べる様子にフォートはハハッと快活に笑うと笑顔を向けてすまないな、と言いながら席についた。サヴァンは持っていた本を机に置き軽く会釈をすると挨拶を始めた。
「私はテールで主に第五銀河について研究をしているサヴァンです。数年前、一時的ですがアージェントの家庭教師をしていました」
ベルはサヴァンがアージェントの師であると云う事から自分が思ったよりも歳上であろうと解り少し驚いたが、その溢れ出す聡明な雰囲気からすぐに納得した。そんなことを考えていると、アージェントがすくっと立ち上がりサヴァンへ会釈をした。
「サヴァン、その節は本当に世話になった。…いや、また世話になるな。…今回の招集、受けてくれて本当に感謝している。貴方の事だから断られるかと内心不安だった」
「はは、あながち間違ってはいないよ。…それにしても君から久方の知らせがきたと思ったら戦争への招集だ。私はてっきり結婚式の知らせかと思ったよ」
互いに柔らかい笑みをこぼしながら話す様子をみてベルは2人の絆の深さを感じた。
「なあ、アージェント。神軍隊長って5人って話じゃなかったか?」
談笑が続く中、フォートがアージェントへ尋ねた。
アージェントは目元にさらりと落ちてくるまるで光でできた糸を集めたような美しい金色の髪を片手で掬いあげるとあらわになった青色の瞳に壁掛けの時計を写した。
「そうだな…最後の1名はもう間もなく到着の予定だ」