読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

第17話「幕開け」

白い木に繊細な彫刻で縁取られた会議室の扉を開けて、その青年は現れた。

 

青年はすらりと脚が長く、薄紫色の短いマントをまとっている。

町中の女性から黄色い悲鳴が聞こえてきそうな、不思議な魅力を持っていた。

 

「あれ、みなさんもうお揃いで。遅刻しちゃったかな」

目元の泣きぼくろを人差し指でトントンと叩いて少し困った顔をしている。

 

「いえ、今集まったばかりです。遥々来ていただき感謝します。シオン王子」

アージェントは胸に手を当て会釈をした。

王子と聞き、ベルはぎょっとして目を見開いた。驚いたのはフォートも同じだったようで、肩を上げている。

 

「あなたがアージェントさんだね。いやあ、王子は辞めたから堅苦しいことはいいっこなしだよ」

シオンは薄紫色のマントの裾を胸元に添えて続けた。

「みなさん、初めまして。ヴェントの義勇軍"アスター"のリーダーをしている、シオンだ。よろしく!」

そう言ってシオンは明るく微笑んだ。

フォートは、先ほど肩に力を入れた姿勢はどこへやら、どかどかとシオンに近づいていった。

「なんか色々事情があるみてーだな。王子じゃないなら、気使わなくて済んで助かったぜ。俺はフォート。よろしくな」

フォートはシオンの肩を叩いた。力加減を知らないのか、シオンは痛いよと言って笑っている。

「シオンさん、初めまして。ベルジュメルと申します。フルール国軍に従属しております。以後お見知り置きを」

ベルはフォートとシオンに近づいてから、きちんとお辞儀をした。

シオンはお辞儀をしているベルを少し覗きこむ姿勢で、にっこり笑った。

「よろしくね、ベルジュメル。あと、さん付けなんていらないよ。ね」

間近でシオンに微笑まれて、思わずベルは赤面した。

「わ、わかりました。よろしく、シオン」

 

一部始終を見ていたサヴァンはやれやれとため息をついた。

「では、シオン。私はテール国から来たサヴァンです。よろしく」

手短にまとめた挨拶が、サヴァンの人となりを表していた。

 

アージェントは窓から差す強い光を背にして、招集した面々に向き直った。

 

「フォート、サヴァン、ベル、シオン。今回の招集に応じてくれたこと、改めて礼を言わせてほしい。知っての通り、オーキャルが壊滅した今、彗星との全面的な戦闘は避けられない。自国の防衛はもちろんだが、なんとしても根源を無くさないことには被害は拡大していく一方だ。

そこで彗星討伐のための精鋭軍を結成した。君達にはその軍の指揮官として戦ってほしい」

アージェントの士気をまとった眼光に、ベルは皮膚がヒリヒリと痺れるのを感じた。

 

窓からは、さんさんと光が照らされていた。

戦闘などという血生臭い言葉と無関係のような輝きだったが、これが現実なのだとベルは眉唾を飲んだ。