第20話「誓い」

ソレイユ王とアルメリアの送迎を部下の兵に任せたアージェントは足早に作戦指令室へ向かった。

いつも冷静なアージェントにしては珍しく緊張し、焦っていた。

自室に戻る猶予はない、歩きながら考えを始めた。

 

まるで神話の様な敵を相手にするのだから相当の兵そして軍力が必要だと考え、ソレイユ内での人脈を脳内で巡らせたが残念ながら大軍を託せられる者など考えつかなかった。

 

大軍を率いて世界を託せる者…

なにもソレイユだけで軍を作ることはないのでは?

 

その考えが過った瞬間、アージェントの脳内には眩い光とともに複数の人物が浮かんできた。

 

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フレイム一の腕を持つ、国軍隊長であり幼馴染のフォート。間違いなく最前線で活躍してくれるだろう。

テール、いや第五銀河でも有数の天才科学者であり尊敬する我が師、そして友人のサヴァンサヴァンにしか任せられない…作戦参謀となってくれるはずだ。

ヴェントの最高指導者と名高く、民からも絶大な信頼を得ている義勇軍アスターのリーダー、シオン。剣の腕も確かだと聞いている。

 

そして…数年前のあの日、強く美しい瞳を輝かせていたフルールの女騎士、ベルジュメル。…いよいよ彼女の力を借りる時が来たか。

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アージェントに迷いはなかった。

 

それぞれの星を守ることができ、大軍を率いて世界を救うために共に戦う仲間…アージェントは自分を含めたこの五名を招集し戦い抜く事を胸に誓った。

 

そんな考えが纏った頃、作戦指令室へ丁度到着し扉を開くと、部下の兵達がズラリと整列しアージェントからの指令を今かと待っている様子だった。

アージェントは兵達の前に立ち、発言台の両端に手をついて話し始めた。 

 

「待たせたな。…早速だが先ほどソレイユ王との謁見中に“黒翼の軍勢”と名乗る二名の者が乱入しソレイユを始めとするこの世界を征服すると宣告した」

 

 兵達はざわついた。急に雲行きが怪しくなり、得体のしれない不穏さがあたりを包んでいたことには誰もが気づいていたが、まさかそんなことが起きていたとは知る由もなかったからだ。

 

「黒翼の軍勢からこの世界を守るため、私はこれより“神軍特別部隊アレス”を結成する!」

 

ざわついていた兵達はアージェントの宣言にしんとなるも、すぐに皆拳を掲げ大声で賛同した。

 

 そして数名の兵が呼ばれ、他星四名の召集令状伝達が任命された。

 この司令、並びに彗星の問題は銀河を揺るがす内容となる為、一旦はこの場にいる兵とソレイユ王のみ知る最高機密事項となった。

 

 

そして伝達兵達が各所へ到着するころ、惑星オーキャルは敵の密行による攻撃を受け壊滅したのだった。