第21話「大役」
神軍特別部隊アレスの指揮官として就任を依頼、もとい命じられた面々の反応は様々だった。
フォートは任せろ!と拳を鳴らした。
サヴァンは腕を組んだ姿勢で落ち着いており、シオンは手を頭の後ろに当て、大変そうだなあなどと言った。
ベルだけが、驚きとプレッシャーを感じているかのようだった。
アージェントに助けを求めにここへ来たのは、ベルの意志であることは間違いないが、まさか指揮官に抜擢されるとは、一つの疑問しか浮かび上がって来なかった。
なぜ、私が?
ベルが気圧されそうになる中、アージェントは説明を続けた。
「黒幕はわかっている。彗星の正体は黒翼の軍勢だ」
「黒翼の…って、あの昔話、ていうか作り話じゃなかったのかよ」
フォートは目を丸くして驚きを隠さなかった。
それに続きシオンが言った。
「それって、言い伝えによると封印されていたはずだよね」
サヴァンは、ふう、と息をつきそれに反論した。
「ここ数年で、封印が解かれる兆候はあったのです。解かれるというよりは消えると言ったほうが良いでしょうか。といっても確かめる術もなかったので半信半疑でしたが…まあ、今回の件は黒翼の軍勢で間違いありませんね」
「じゃあまた封印するってことか?封印の仕方なんてわかんねえぞ俺は」
フォートは頭をくしゃくしゃとかいた。
「フォート、その点は心配しなくていい。封印はしない。再びこのようなことが起きぬよう、全て終わらせるつもりだ」
アージェントは不敵な顔つきで言った。
それを見たシオンは、ひゅう、と口笛を鳴らした。
「わかりやすくていいね」
「お?シオンお前も結構血気盛んだな!気が合うじゃねえか」
フォートは嬉しそうにシオンの肩を叩いた。
「否定はしないけど、フォートほどではないと思うよ多分。あと肩痛いってば」
そんなふたりのやりとりを見ていたベルは拳に力を入れた。
アージェントは腕を組み、話を続けた。
「彼らは次の日食の時に襲ってくると断言しに来たんだ。次の日食まで2週間あるが、オーキャルのこともあり気を抜けるわけではない。それまでには皆、準備を万全にしていてほしい」
アージェントの言葉に一同は頷き、ひとまず今日はここまでにして各々の滞在する部屋の案内へと移ることとなった。
「待ってください!」
部屋を出ようとしたフォートとシオンは足を止め、振り返った。サヴァンは壁に背をもたれ、じっとしている。
ベルは思わず口をついて叫んでいた。
アージェントの吸い込まれそうなほど美しい瞳を見つめ、肩に力をいれた。
「ご無礼を承知でお聞きします。なぜ、私が選ばれたのでしょうか?確かに、アージェント様へ助けを求めに馳せ参じたのは私の意志にほかなりません。しかし私はただのフルール国軍の兵士です。このような大役を任されるような実績も人脈もありません。私が招集されるという事が不思議でならないのです」
ベルは膨れ上がった疑問を投げつけた。