第7話「神殿の姫君」

ソレイユに不時着した小型機から飛び降りてベルはこの国で一番大きな建物を目指して走った。雪よりも白く今にも雲に届きそうなほど大きな建物は神のいる神殿だといわれている。そこにアージェントもいるだろうと確信していた。なぜなら、彼は大神直属の軍の隊長なのだから。
間近で見ると神殿はより白く輝いて見えた。入り口には翼がある二人の兵士が長槍を持って立っていた。ソレイユの人間は皆、翼を持っているのだ。ベルにとってソレイユの人間を見るのは三年前アージェントを見たとき以来だったので、ぎょっとしたがすぐに向き直し、早足で扉を開けようとした。
「おい、神殿に何の用だ」
兵士が槍で道を阻んで尋ねた。
「アージェント公爵様にお会いしたい。どうか通してくれないか。時間がないんだ」
「一般の者の話を聞けるほどアージェント様のお暇はない。後日、許可証をもらってから出直してくれまいか」
ベルは苛立った。のろのろと何日も時間をかけていては意味がないのだ。こうしている内にもフルール滅亡の危機は迫っているのかもしれない。
「時間がないといっているだろう!」
もう一言怒鳴ろうとしたとき、鈴のような声がした。
「おやめなさい」

扉から出てきたのは明るいブルーのドレスをきた小柄な女性だった。透き通るような白い肌にほんのりピンクに染まった頬、金色の長く波打った髪にシルバーの小さなティアラをつけている。絹のように滑らかな翼をしたがえて、どこからどうみても一般人ではないことが分かった。何より、可愛らしいという言葉はこの人のためにあるようにベルは感じた。
兵士は声を聞くと慌てて片膝をついた。
「これは、アルメリア様、わざわざこのような場所にいらしていただき誠に恐縮でございます」
「いいのよ、顔を上げてちょうだい」
アルメリアは兵士に言うとベルに目を向けてにっこり笑った。
「あなたはもしかしてフルールのお方かしら?」
ベルはいきなりの問いかけにたじろいだが、頷いて返事をした。アルメリアはあからさまに嬉しそうな顔をしてから少し慌てて言った。
「ああ、先に名乗らないと失礼ですわね。わたくしはソレイユ王の娘、アルメリアと申しますわ」
それを聞いてベルは心臓がとびでるかというほど驚いた。そして慌てて片膝をついて頭を下げた。
「知らなかったご無礼をどうかお許しください。私はフルール国王軍騎士のベルジュメルと申します」
「やっぱり!あなたがフルールの騎士ね!わたくしの目に狂いはなかったのだわ。どうぞお入りになって」
兵士がオロオロと戸惑っていたがアルメリアに言われるまま神殿の中に入った。

***

アージェントは例の作戦を進める手順のため忙しく動き回っていた。神殿の中の部下たちもせわしなく働いていたため、自分でフルールの様子を見に行くために外むかった。
すると、入り口へ続く廊下に、アージェントが幼いころから知っている、ソレイユ国王の一人娘、アルメリア姫の姿があった。姫は神殿の奥からでることを基本的に良しとされてはおらず、入り口付近にいることはとても珍しかった。
「姫、このような場所で何をなさっているのです」
アルメリアは振り向くと花が咲いたようにふんわり笑って言った。
「あら、アージェントの所へ今から行こうと思っていましたわ。お客様がいらっしゃったの」
アルメリアの後に立っていたのは三年前にフルールで見た見習いの女騎士のひとりだった。
「アージェント公爵様、お久しぶりでございます。私はフルール軍騎士のベルジュメルと申します。以前お会いしたことがあるのですが、その時はまだ訓練生でしたので」
ベルは丁寧にお辞儀をして挨拶をした。
「フルールの騎士の話をアージェントが前にしてくれたことがあったでしょう?その話のイメージとぴったりの人が入り口にいるのをテラスから見つけましたの。すぐわかりましたわ」
「そんなことなら人を使わせばよろしかったのに」
アージェントは片眉を下げて笑う。馬鹿にするのとは違う、慈しむような笑顔だった。
「どうしてもお会いしてみたかったの。今を逃すととても忙しくて会うのが困難になるかもしれないでしょう?ふふ、アージェントはよくフルールのお話をするのよ」
アルメリアはベルの方をみると口に手をあてて最後の一言を耳打ちした。エメラルドグリーンの瞳を細めてくすくす笑う姫はとても愛らしく、女のベルでも頬を染めてしまうほど可愛らしかった。
「ベルジュメルと言ったな。覚えているよ。ちょうど私も君に会いに行こうと思っていたんだ。話ならあちらの部屋で聞こう。先に入っててくれ。私は姫を奥間までお連れしてから行く」
「わたくしなら一人で大丈夫ですわ」
「そういうわけにもいきません。あなたは目を離すとどこへ行くか」
「ベルジュメル、ごめんなさい少し待ってていただける?この人一度言い出すと聞かないの。お部屋にお茶をお持ちするよう言っておきますわ」
「ご丁寧にありがとうございます」
ベルはお辞儀をして、指定された部屋に入った。

第6話「作戦開始」

 丁度同じ時、ソレイユでは一人の兵士が慌しく公爵の居る執務室の扉を勢いよく開けた。

「ア、アージェント様!!」
「…どうした、その様に慌てて」
「はい、只今幹部よりフルール同盟国オーキャルが接近中の謎の彗星によって侵食されたとの報告が…」

その知らせにアージェントは書類を読む下を向いた瞼を上げ、耳だけを向けていた姿勢を兵士の方へと向きなおした。

「侵食?確かオーキャルでは本日付で新隊の任命式が行われていたはず…」
「はい、オーキャルの自国軍、民間、そして訪問していたフルールの軍隊は壊滅とのことです」
「そうか…ついに此処まで来たか…」
「はい、恐れていた事がついに…して、どのように…」
「ふふ、そう慌てるな」

アージェントはそういいながらゆっくり立ち上がり、慌てふためく兵士の肩にポンと触れては口端をゆるくあげた笑みを浮かべて自室を出て行った。
長く続く廊下をコツコツと早足の靴音を響かせながら進む途中すれ違った血相を変えながら慌しく駆け回る兵士達はまるで今起きている事の重大さを物語っているようだった。
靴音が止んだ扉の前で二つノックをするとゆっくりと部屋へ入っていった。

「…アージェントか」
「はい、国王…先日お話した事項にご決断を」
「……ああ、総ての指揮はお前に委ねる」
「有難う御座います、では早急に各国へ呼応を開始致します」

それからのアージェントの行動は早く、作戦内容は第五銀河惑星に所属する各部隊へと伝達された。

***

(一刻も早く彗星の妨害を…ソレイユへに行けばあの方がいる…モナミが尊敬し慕っていたあの方が……!)

ベルはモナミとの祝いの待ち合わせのためかベルは珍しく髪を下ろし少し色の明るい服を着ていたが、駆け出し走りながら勢いよく着ている服を破り捨てると下に着ていたいつもの戦闘用の軍事服になり、懐に入れていた紅色のゴムできつく髪を結んだ。
フルールを出てソレイユへと向かおうと息を切らしながら思いを一心に走った。
国王の許可なしには運行は出来ないと立ち入りを防ぐ兵士達を押しのけ搭乗機へと乗りフルールを飛び立った。

「徴兵令、徴兵令、国王軍第一騎士団ベルジュメル、至急国王室に来なさい」

フルール中にけたたましいサイレンとアナウンスが響き渡ったのは、止められなかった兵士達の視界からベルの乗った搭乗機の姿が見えなくなった頃だった。

第5話「最悪な事態」

 オーキャルは銀河で最も清らかな湧き水やエメラルドのように輝く小川が流れることから別名を水の都と呼ばれている。小さな星であるために、オーキャル国軍はとても規模が小さく、自衛機能として足りていない。そのため同盟国のフルールに一部財政利益を渡す代わりに外星からの被害があった場合には援助を受ける条約を交わしていた。

この日は各騎士隊長の任命式が大聖堂で行われていた。
大聖堂の中にはオーキャルとフルールの各隊長とその隊員数名が集まっていた。皆、揃いの紅色のジャケットに銀のバックルをつけた黒いブーツ、上着と同色の縁なし帽をかぶって整列していた。
式も終盤になり、解散しようとした瞬間、耳を裂く様な轟音と悲鳴が辺りを埋め尽くした。縦に長い扉を勢いよく開けて入ってきたのはオーキャル国軍の隊員だった。
「失礼致します!た、只今、突如現れた黒い翼の謎の軍隊に襲撃されています!どうか出撃を…」
隊員は息を荒げながら言い終えるとその場に倒れ壁にもたれかかった。背中から流れる血が跡を引いていた。大聖堂の空気は一変し、不安と驚きに呑まれたがすぐさまフルール国軍の第一隊長は兵を配置し、残りの者にはフルールへの伝令を呼びかけた。
「モナミ、小隊長最初の仕事だ。やれるな?」
モナミは口の端を上げて勝気に笑った。
「もちろんです。必ず成果をあげてみせましょう」
一礼するとモナミは素早く現場へと向かった。

***

速報を見たベルは人ごみの中で立ち尽くしていた。
「オーキャルは完全に侵食されたらしい」
「隊長任命式に滞在してた隊員たちの生存者はいないって」
色々な情報がベルの周りで行き交っていたがどの音も聞こえていなかった。体中から血の気が引いていくのを感じた。足が地面に埋まったかのように重く動かない。微塵も想定していなかった最悪な事態が起こってしまったことをどう受け入れろというのだろう。ただ、スクリーンを見つめて呆然とするばかりだった。
そして、ふとあることに気づく。彗星はオーキャルを侵食したあと、そのまま去るとは思えない。次の標的はすぐ隣のフルールなのでは…?
そうだとしたらこちらは絶対に不利な戦いになる。フルール国王軍はほとんどオーキャルに行っていたのだ。その軍が壊滅したのだとしたら、自国に残ったわずかな兵で向かうしかない。
「どうにかしなければ…フルール国王の指示を待っていたら間に合わない…!!」

第4話「速報」

 モナミの小隊長任命式目前としたある日、統一国ソレイユでは、近頃発見されたこの第五銀河惑星に接近中の謎の彗星についての会議が行われていた。

「…以上です」
「では随時彗星の観測を怠らぬように」
「はい…隊長、余談ではありますがフルールの同盟国のオーキャルに新しく任務を課せられた隊の頭はフルール出身の女騎士だそうです」
「ほう…その女騎士の名はなんという」
「名はモナミ、年は19とのこと」
「モナミ…名のあがった女騎士はそれだけか」
「はい、以上です」
「そうか」

アージェントは会議室を覆う大きなガラス張りの窓の奥に広がる銀河を見据えながら小さく微笑んだ。

***

「モナミ遅いな…」

モナミの任命式当日、日はすでに落ち茜色の空も次第に夜の色へと変わり始めていた。
式を終えたらすぐ来ると言って式場兼任命国のオーキャルに向かったモナミ。
式終了の時間は疾うに過ぎているのに一向に姿を見せることはなかった。
モナミは今まで約束に遅れてきたり無断で約束をすっぽかすことなど一度もなかったためか、ベルは急に不安な気持ちで埋め尽くされていった。
それからまた一時間程待ったがモナミは現れなかった。
ベルは不安な気持ちを抱いたまま帰途につく途中、街の広場にある大きなテレビモニターから速報が流れた。

『…繰り返します、数時間前、同盟国オーキャルが謎の彗星によって侵食されました。オーキャルの自国軍、民間、そして訪問していたフルールの軍隊はほぼ壊滅状態で…』

ベルは目を見開いた。

第3話「予感の時」

 やがてふたりは訓練生としての鍛錬を終え、一国王軍騎士となっていた。

席について食事を始めたばかりのベルに、モナミが大きな音を立てて扉を開け、息を切らせながらやってきた。
「モナミ、一体何の騒ぎ?」
「私、国王軍の小隊長に抜擢されたの!」
「ほんとうに!やったじゃない」
ベルは思わず立ち上がって手をたたいた。
「まさかこんなに早く昇進できるなんて思ってもなかった。信じられる?私たち訓練生を卒業してからまだ2年よ」
「モナミだからよ。やっぱり才能あるもの」
「馬を御すのはベルのほうが上手じゃない」
「いいの、私は戦うより散歩する方が好きだから」
「もう。ベルったら」
モナミは少し落ち着いて、侍女にコーヒーを淹れるよう頼むと、ゆっくりと席に着いた。ベルも続いて席に着くと、食事の続きを始めた。
「私はもっと強くなりたい。そしてアージェント公爵様に少しでも近づきたいの」
「アージェント公爵…」
ベルは3年前に見た公爵を思い出した。プラチナブロンドの長い髪の毛に、青い瞳が吸い込まれそうなほど澄んでいた。あの整った顔立ちと気品のあふれ出た物腰は、直接会話を交わした者は絶対に忘れることはできないほど強く印象に残るものだった。
モナミはあの日からアージェントの器量と強さに惹かれ、憧れと尊敬を彼に送らない日はなかった。
「小隊長を正式に任意されるのは来週の今日なの。ベルの19歳の誕生日とかぶっちゃったね。式が終わったらすぐに行くから、お祝いしようね」
「ありがとう、モナミ」

毎年当たり前に祝うお互いの誕生日を二人一緒に過ごせると信じて、疑う者がいるはずもなかった。

第2話「外れた道」

 フルール一の大きさを誇る大神殿。
穢れのない真っ白い色に包まれたその清楚な概観は、第五銀河惑星統一国ソレイユをイメージして作られたという。
その真っ白な神殿の中心を表す巨大な扉は今回の公爵訪問のような大きな催し物でもなければ滅多に開かれることはない。
ベルはそんなことを薄々と考えながらモナミの後に進むと正面扉に行くはずの道が徐々に逸れている事に気がついた。

「モナミ、こっちじゃな…」
「いいのいいの!」

云われるがまま外れた道を進めばそこは丁度神殿の裏口にあたる場所だった。
そのまま前に進もうとするベルの袖をモナミは慌ててグイと引っ張りその場の茂みにしゃがみこんだ。
ベルがモナミへ問いかけようとした時、足音と共に数人の話し声が聞こえてきた。

「……ええ、その様にお願い致します」
「ああ」

小さな手帳の様な冊子を捲りながら傍らに言葉を話す執事と思われる男性と、背が高く透き通る様な白金の長髪に凛とした表情をのせた端正な顔立ちの男性が目の前を通り過ぎようとしていた。
他人に余り興味を持たないベルもその男性の放つ気品と圧倒されるような風を纏う姿に思わず目を奪われてしまった。
同時にその姿に見惚れ瞳を輝かせたモナミが我を忘れ前へ進もうと茂みに足を踏み入れると、辺りに小さく草音が響いた。

「そしてフルールの民への挨拶の後、国王との会食に………何奴!」

執事と思われる男性の一声であっと云う間に何処からか現れた兵士が二人を囲んだ。
二人は突然の出来事に驚き目を見開いた。
すると此方に気づいた男性が兵士達へ視線を送った。

「やめなさい、彼女たちは私の連れだ」

すこし低めの声がそう告げると兵士たちはすぐに手を引き姿を消した。
コツコツと靴音をならしながら二人のもとへ歩み寄ってきた。
二人は慌ててその場に立ち上がりお辞儀をした。

「私の部下が無礼な事をしてすまない、恐い思いをさせたな」

ふわりと微笑みながら二人へ言葉をかける姿はとても綺麗で優しい印象だった。
モナミは頬を真っ赤に染め、瞳を輝かせながらハキハキと答えた。

「い、いえ!私はフルール国王軍第一騎士団訓練生モナミと申します!女では在りますが、ソレイユのアージェント公爵の様に強く、フルール一の剣士になれる様日々訓練しています!」
「同じくフルール国王軍第一騎士団訓練生ベルジュメルと申します。」

続いてベルも月並みの台詞で挨拶をしてまた深くお辞儀をした。
二人の様子に少し驚いたのか幾数か瞬きを早めにしてクスと鼻先で笑い二人に話した後、執事と思われる男性に向かって小さく呟いた。

「そうか…私の名はアージェントだ。私も二人に負けぬ様日々精進しよう。
 ……将来が有望だな…この星に私の助け等いらぬのだろう」
「ア、アージェント様何を…」
「ふふ、戯れだ、ではそろそろ行こうか」
「は、はい…では此方へ」

金の糸の様に美しい髪を風にゆるくなびかせながら神殿へ向かう後姿を見送るとモナミはその場にゆるゆると座り込んだ。

「モナミ…?!」
「ふぅー…緊張したぁ…すごい迫力だったね……」
「あ、うん…あれがモナミの言ってた公爵様か…」
「そう、ブラン家第一ご子息のアージェント様、そして20歳の若さで神軍を率いる神に一番近いと言われている人…」
「神軍第一隊長アージェント・ブラン…」

少しずつ茜色に染まり始める空と草木をほのかに揺らす風がそよぎ始めるなか、ベルは同じように頬を赤く染めながら話すモナミの横顔をゆっくりと見つめた。

第1話「騎士団訓練生」

 ベルは今年で16歳になる。騎士団の訓練生として小部隊に所属する女子は少なくなく、ベルもその中の一人だ。幼馴染であり親友のモナミとふたりで日々競い合っては腕を磨いていた。訓練生のなかでベルとモナミは抜群に優秀で、そこらの男と剣で勝負して負けることはまず無かった。

ある日、馬の世話をしていると、馬屋の横の井戸端で街の女たちが噂話に花を咲かせていた。第五銀河惑星を統一している星、ソレイユの公爵が、ベルたちの住むフルールに来るというのだ。

第五銀河惑星とは、数ある星のなかでも跳び抜けて発展した五つの惑星の総称だ。その五星にフルールも含まれているのだが、ソレイユは比べものにならないほど大きく、銀河全体を統一しているといっても過言ではなかった。その星の公爵というのだから、ベルからすれば、文字通り雲の上の存在であり、噂話に参加する気にもならなかった。
しかし、モナミが持ち前の好奇心とミーハーさで、一目見たいとだだをこね、ベルが一緒に来ないと機嫌を損ねるのが目にみえたので仕方なくついていくことにしたのだ。

「今日訪問される公爵様って大神様の直属、神軍(しんぐん)の第一隊長だって」
モナミが新しく手に入れた情報を嬉々として報告した。
「それって、あの有名な?」
「そう!貴族中の貴族、あのブラン家のご子息!」
ベルも常識として知っていたが、目を輝かせて語る自分の親友ほど詳しくなかったので言われても明確に顔を思い出せなかった。
「ご子息ってふたりいなかった?どっちが神軍第一隊長なの?」
「やだ、ベルそんなことも知らないの?兄君のほうよ。相変わらず平和主義者なんだから。ちょっとは軍の知識も深めなさいよ」
言われてもやっぱり顔は思い出せなかったが、これ以上聞くとモナミにからかわれそうだったので、やめておくことにした。
「そろそろ行かなきゃ、公爵様のお着きに間に合わないんじゃない?」
「大変、すぐに行かなきゃ」
二人は神殿の方へ駆け出した。